イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所 レビュー

 ©2014 Warner Bros. Ent. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights Reserved.

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 子供にとって、家庭はいつでも戻ってこられる安心できる場所だ。外の世界に大きく羽ばたく前に、一歩外へでかけては、また戻る。もう少し離れてみて、また戻る。いつ戻っても家族が暖かく迎えてくれる。だから何度でも外の世界にトライできるのだろう。

『イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』は、そんな暖かい居場所が舞台だ。現在、父は学校の先生をしているけれど、両親ともに、元はパンクロッカー。両親と同じように、昔のロックが大好きな弟。ミアだけがクラシック音楽の虜になり、17歳の今も、チェロをひたすら弾く毎日を送っている。最近彼氏ができたばかり。彼氏のアダムもロックシンガーだ。 愛情いっぱいの家族にある日、悲劇が起こる。

雪で休校になったため家族でドライブしている最中に交通事故に見舞われたのだ。ミアは、呆然と立ち尽くす。お父さん、お母さん、そして弟は? ミアも重傷を負い、身体と自分が離れてしまったらしい。自分の身体とともに病院へ行き、家族の状態を確かめようとする。だが悲しい知らせが次々に舞い込んでくる。

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冷たい灰色の病院の光景と、なごやかで温もりがある過去の日々がコントラストを描き、重層的な効果を上げている。鮮やかに浮かび上がるのは、ありふれた日々のささいなこと。彼との出会い、彼のコンサートに行って場違いに気が詰まる思いをしたこと。小さな子供だったころ、チェロに出会い夢中になったこと。ジュリアード音楽院への夢、彼との心のすれ違い。

家族との思い出、彼とのやりとりの一瞬一瞬を、いとおしむようにに丁寧につむいだのは、ドキュメンタリーの『ファッションが教えてくれたこと』のR・J・カトラー監督。中高生向けのヤングアダルト作品を、大人にも涙を流させる、透明感が深い世界に作り変えた。スクリーンから浮かび上がった悲しみや喜びは、いつまでも心に残る。  (オライカート昌子)

イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所
2014年10月11日(土)新宿バルト9、梅田ブルク7他ロードショー
イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所 公式サイト http://www.ifistay.jp/